ガンを克服した人から情報をもらう
まず、最も簡単にガンサバイバーの考え方に触れることができるのは、ガンから生還した患者さんの手記(闘病記)を読むことです。
特に同じガンを克服したサバイバーの心構えや生き方は、これから治療を受ける人には励みになりますし、ガンを克服するうえでとても参考になります。
『闘病記専門書店の店主が、がんになって考えたこと』(産経新聞出版)の著者である星野史雄さんは、妻を乳ガンで失ったことをきっかけに、闘病記専門古書店を設立します。星野さんは、およそ2800冊もの闘病記を読破し、自らも大腸ガン患者となった経験を通して、ガン闘病記が患者さん(特に「病気になりたての新米患者」)にとって、心の救いや道しるべ、あるいは、ときに反面教師になることを述べています。
アメリカの研究者であるケリー・ターナーが書いた『がんが自然に治る生き方』(プレジデント社)では、余命宣告を受けたにもかかわらず進行ガンが治ったサバイバーたちのエピソードをまじえ、ガンを克服するための心構えや実践すべき方法が、くわしく紹介されています。
インターネットにも、ガン患者さんの体験談を紹介しているウェブサイトがありますので、参考にするのもいいでしょう。
家族にはわからない悩みも共有できる
また可能ならば、ガンサバイバーと直接お話をすることをおすすめします。ガンを克服した人と実際にふれあうことで、闘病記よりもさらに強い希望や勇気がもらえることがあります。
また、ガン患者さんは、ときに「家族やまわりの人には自分のつらい気持ちがわからない」という孤独感に悩まされることがあるのですが、同じ境遇を体験したガン患者さんの話やアドバイスによって、孤独感が和らぐことがあります。
ガンサバイバーと交流をもつためには、患者会(患者サロン)に参加するのがいいでしょう。
がん診療拠点病院の「がん相談支援センター(あるいは、がん相談窓口)」で、患者会を紹介してもらいましょう。定期的にガン患者会を開催している病院もあります。また、インターネット(病院や都道府県・市町村のホームページ)を使って、近くで開催されている患者会を探すこともできます。
すぐに情報がほしいときはソーシャルメディアを使う
最近では、ガン患者さんやガンサバイバーを対象としたソーシャルメディア(SNS)のコミュニティーなどもあり、ガンの体験談、治療やサポートについて、さまざまな情報がやりとりされています。
もちろん、顔の見えないコミュニケーションには、さまざまなリスクもあります。
ですが、「手軽に始められる」、「自宅にいながら(あるいは入院中でも)参加できる」、「都合のいい時間にできる」、「本音で話しやすい」というメリットもあるようです。レスポンスも早いので、すぐにでも情報がほしいときや、経験者への質問があるときなどにも便利です。
注意すべきなのは、闘病記、患者会、あるいはSNSのいずれを利用するにせよ、他のガン患者さんやサバイバーの意見や助言を鵜呑うのみにするのではなく、1つの例として冷静に受け止めることです。
特に、ガンサバイバーがすすめる治療法やセルフケアを試すときも、自分でもよく調べ、主治医と相談してからにしましょう。
たとえ、同じ種類(臓器)のガンだとしても、他人に効果があった治療が自分に効くとはかぎりません。
いずれにしても、ガンサバイバーから得た考え方や情報は貴重です。自分にとってメリットのあることだけを取り入れましょう。
ガンが治る人
「いいとこどり」で治療を進める
ガンが治らない人
1つの治療にすべてをかける
ガンの治療法を決めるうえでは、多くの情報を集めることが大切であることはすでにお伝えしました。
では、これらの情報をもとに、どうやって治療法を選べばいいのでしょうか?
まずは、自分のガンの現状をしっかりと把握したうえで、考えられる治療法をできるだけたくさん挙げます。
どんな治療法にも、期待される効果と望まない副作用・後遺症があります。また治療法によっては、健康保険の適用外で経済的負担が大きいものもあります。
治療のメリットとデメリットのバランスを考え、「自分がどのように生きたいか」に最も合った治療法を選ぶのがいいでしょう。
「治療効果を重視」するのか、あるいは「生活の質を重視」するのかは、患者さん個人の価値観や社会背景により違ってきます。
完璧な治療はない
ガン根治を目指す場合、まずはエビデンスがある標準治療を優先すべきです。
ただし、手術や強力な抗ガン剤などの、体に負担が大きい治療の場合には注意が必要です。
特に高齢者(80歳以上)、活動性が低下した人(寝たきりの人や日常生活で介助が必要な人)、あるいは、治療中の重い持病(特に心臓や肺の慢性疾患)がある患者さんでは、治療効果よりも合併症や副作用のリスクのほうが大きくなります。
このような患者さんでは、治療のメリットとデメリットについて主治医とよく相談することが必要です。